1793 こどもの日に…。


何年前だったかな。久しぶりに会った母は、開口いちばん「引っ越したい」といいながら父の育った島の名を口にした。「こんな」頭を見られたくないの」といいながら、
被っていた帽子をとると、ガン治療の影響で抜け落ちていた髪が、やっと数センチ回復していた。ぼくは思わず、「あ~、いいよ」といい、続けて「いままででいちばんおしゃれだ」というと、母はきょとん。ぼくは持っていたノートPCでジーン・セバーグの写真を呼び出し、「ほら、この人と同じ。彼女はこのヘアスタイルでスターになったんだよ」といった。はじめはけげんな表情だった母の顔が、写真を見ているうちに、少しずつ明るくなっていったた。お世辞やごまかしではなく、本当に母によく似あっていた。「いま以上伸ばさないほうがいいよ」というぼくを見て、嬉しそうに微笑んだ。母のステキな笑顔を見たのはあの日が最後になった。話ができる状態の母に会ったのは、そのあと一度。歩くのも大変そうだったが、朝までいろいろなことを話してくれた。もう一度、あの日の笑顔を見たいな。 🌺きょうは、母の命日です。
カテゴリー: あの日。, きょうの気分, さみしさに耐えられなくなったら。, asobo, 愛のかたち パーマリンク

1793 こどもの日に…。 への6件のフィードバック

  1. paprica より:

    ジーン・セバーグのようなショートが似合ってしまうお母さんだったんだね♪ 素敵。お母さんとasoboさんの会話が聞こえてきそうで、優しい気持ちになりました。目を閉じたらいつもショートヘアで優しく笑っているお母さんの顔が浮かぶんだね♪ 

    • asobo より:

      papricaさん、こんばんは🌠🌛
      彼女の写真を見せた途端、急にまんざらではない笑顔。とてもわかりやすい母でした。一時は父が生まれ育った、それこそ絶海の孤島という感じの島に行こうとしていたんだけどね。グーグルアースで島を見ると島にある家は10数軒。それも平地ではなく段々畑のように整地された猫の額ほどのところにです。ぼくが小学生の夏休みに行った時は、電気が使えるのは夕方6時から夜9時まで。それ以降はランプという生活でした。その代わり、夜は目がいたくなるくらい夜空には星だらけでした。

  2. Sachie より:

    このブログを読んで不思議なことにasoboさんのお母様を頭の中に想像することができました。ショートカットの髪型をまるで少女のように恥ずかしそうに見せるお姿や、きっと五月の空のような青いワンピースがお似合いになるのでは?と勝手に想像してしまいました。気を悪くされたらごめんなさい。素敵な5月でありますように 🙂

    • asobo より:

      Sachieさん、こんばんは🌠🌛ちょっと長く休ませていただきました。
      ぼくは母のコットンのワンピース姿がとても好きでした。青空のようなワンピースは持っていなかったと思うけど、爽やかな色が好みのようでした。5月は母の命日を皮切りに、ぼくの取ってはとても大切な命が消えていった月なんです。以前はつらい気持ちになっていいたけど、いまはきちんと乗り越えています。
      そうそう、火曜日にもう一度ソール・ライター展に行ってきます。カタログは300ページを超えています。ご希望なら購入しておきますよ。

  3. yuukari2 より:

    こんにちは^^

    私も現在、病気のため髪の毛を短くしてます。
    ずっと長くしてきて、とても勇気がいりましたが
    『短いのも似合うよ』と、主人の言葉にどれほど救われたか・・・

    お母様の命日なのですね。
    心の中に素敵な笑顔がみえませんか^^

    • asobo より:

      yuukari2さん、こんにちは🌄
      ご主人、やさしい方ですね。
      それって何よりのしあわせ、いいですね。
      ぼくはもともとショートカットが大好きです。
      大好きな映画監督パトリス・ルコントが書いた「ショートカットの女たち」は、ちょっとノー天気なほど何事もうまくいく話だけど、気分転換に時々読んでいます。
      母の命日だから、きょうは母の笑顔を思い出しながら思い出しながら書きました。
      GWの後半、ご主人とゆったりお過ごしください😊🐻

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