1002 彼女の気分。

 部屋を整理していたら懐かしい広告が出てきた。ぼくには一生忘れることの出来ない作品だ。ずいぶん昔のことだけど、当時活き活きしていた女性たちが描く絵やイラストと文章をきっかけにして、ある電話会社のメッセージを発信するという企画だった。ぼくがどうしても出て欲しかったのが、シューズデザイナーの時代を切り拓いた KTさん。仕事は受けていただいたが、デザイン画につける文章はぼくが書くことになった。
失敗した絵の話だったが、彼女のデザイン画は完璧だった。ぼくはその絵を彼女の目の前でくしゃくしゃに丸めてゴミ箱にポイとすて、「こんな素敵な絵ではなく、失敗した絵が欲しいんです」といった。彼女はぼくの目をまっすぐ見て、『私は失敗しません』ときっぱりいった。その瞬間、背筋に冷たいものが走った。なんてことをしたんだ、ぼくは・・・。『こんなにしわくちゃでは使えませんね。もう一枚だけ描きます』 2時間後に受け取る約束で、とりあえず彼女のオフィスを出た。
歩きながら、失敗しないということは、彼女はぼくの文章も気に入らなかったんだと気づいた。その瞬間、「私の気分」という新しいタイトルが浮かび、それに続くコトバも流れるようにわいてきた。すぐ彼女に電話して、思いついた文章を伝えた。
電話の向こうの彼女の表情が見える気がした。2時間後に受け取ったのが、この広告のデザイン画だ。ぼくの文章も、気持ちよく清書していただいた。
最後に彼女がぼくにいったコトバは「もう広告の仕事はしません」だった。ほんの数時間の間に、ぼくはKTさんからとてもたくさんのことを学んだ。この広告を素敵なフレームにいれて部屋に飾りたくなった。こんな大失敗をしょっちゅうしたけど、いつもいろいろな人に支えられ、救われていた気がする。
 ★全体を見て欲しかったけど、KTさんの了解をいただいていないのでとりあえずトリミングさせていただきました。 ★★こんなこと書いたのを見たら叱られるかもしれないな。ある日この原稿が削除されていたら、叱られたんだと思ってください。
 
カテゴリー: きょうの気分 パーマリンク

1002 彼女の気分。 への17件のフィードバック

  1. Birgit Fohlert より:

    I do not understand your language,but I like your photos…from where do you come from?
    Have a nice day!

    • asobo より:

      Hello, Birgit Fohlert♪
      I’m sending my blog from Japan.
      I suppose you’re from Germany. Right?
      I like your photos very much. They’re very
      attractive.
      I’m looking forward to seeing your photos☺   

  2. より:

    さくらねこさん、こんばんは。勉強頑張っているみたいでいいね。仕事も勉強も、やる以上はいい結果をだしたいよね。途中が大変でもいい結果が出せれば苦労したこともうれしくなるし、苦労が歓びを大きくしてくれる。結果がいのちと言ってもいいかな。でも、成功への課程も楽しめたらよりすてきだよね。しんどいと思ったら、本当にしんどくなる。勉強も楽しもうという姿勢で頑張って!なんか、塾の先生みたいなこと言ってるかな。☆1000回へのおめでとうをありがとう。

  3. さくらねこ より:

    凛として、芯のあるお話。胸に刺さるものがありました。asoboさんのプロ意識。KTさんのプロ意識。本物には…唯一の、厚みがありますね。そしてどこまでも…美しくて。自分は? 見習わなくちゃ!! です。「本物」の仕事。私も…そんな素敵な仕事を、きっと、できるように…頑張ります!*いつも、心に残る記事を、ありがとうございます。 実は、今回だけでなく、記事はみんな、拝読しているんですよ^^ 申し送れてしまいましたが、 *☆【1000記事突破、おめでとうございます】☆* これからも、素敵な記事を楽しみに参りますね。

  4. asobo より:

    星の恵子さん、こんばんは。どんな靴だろう、気に入ってはいていたらぼくもうれしい。ぼくもKTさんのブーツを一足持っていました。好く気に入っていて、いつもはいていました。ちょっとワークブーツっぽいデザインでした。ボロボロになってももっておけばよかったなぁ。

  5. より:

    この方のデザインした靴、私も持っています。とてもすてきなかたですよね、いつかアルネって雑誌で読んだことがあります。

  6. asobo より:

    ピリカ ペコさん、こんにちは。道の駅でのバイト、馴れましたか。大失敗ばかりとは困りましたね。でも、失敗するたびに人は大きく成長するんだから、あまり気にしない方がいいよ。といっても、同じ失敗をかさねることはないようにね。美味しい野菜に囲まれていいね。それにしても、ピリカペコさんは早起きだね。その分早寝しているのかな?カラダをいたわりながらがんばろうね。

  7. asobo より:

    ほこさん、こんにちは。安全靴ですか。先にスチールが入っているやつですね。ずいぶん前、アメリカでワークブーツを捜したとき安全靴のことをはじめて意識した。好きなデザインがあって靴紐を濃いオレンジか赤に変えたらすてきだろうなと思ったけど普段履くのにあの重さはね・・・。ぼくはニューヨークで見た消防士の防火服や靴が欲しくてしかたなかったけどアメリカ人はああいうものをデザインさせるとうまいね。仕事に自信を持って、颯爽と働いているのはステキだ。そしておしゃれに気遣うのもとてもいい。がんばって!

  8. ペコ より:

    お仕事っていろいろあるものですよね。私も大失敗ばかりですが、人生の成長の過程としてがんばるぞ~!

  9. ほこ より:

    安全靴のデザイナーっていないのかな・・・・どこに行ってもサイズの小さいのってなかなか見つからないし あっても地味で暗いのよね~ でもフォークリフトに颯爽と乗った時のペダルに乗せた安全靴がおしゃれだったらジーンズと似合ってとてもカッコいいよね。ハイヒールじゃなくても姿勢よく自信を持って仕事をしていれば・・・・あっそうだ今度おしゃれな端切れを自分で布を縫いつけてみようっっっ ほこブランドだな♪

  10. より:

    ☆ちえみ☆さん、こんにちは。はい、一生忘れられない仕事のひとつです。ぼくにはこれとは違う失敗もたくさんって、いま考えるとそのつどいろいろな方にやさしく助けられて窮地を脱出しています。死にたい、もう絶体絶命という目にもたくさんあっているけど、そのほとんどが結果はより良くなっています。その都度、人っていいなぁと思ってきています。失敗談だけでもブログがつくれるほど失敗をしているかもしれない。でも、こうやって思い出すと、たくさん失敗していてよかったとも思います。

  11. より:

    沈丁花さん、こんにちは。プロとプロとの激しいせめぎ合いではありません。ぼくよりひとまわりもふたまわりも大きい本当にプロと言える方にプロの仕事とはどういうモノかを教えていただいたというのが多dしいのです。あれ以来、KTさんの靴を見ると頭が下がります。ぼくを叱らないで、じぶんの仕事をキチンとしながらじぶんの関わった原稿を彼女のレベルに引き上げるようにするようガマンして絵を描き直していただいたんだと思っています。あこがれの方と仕事が出来てぼくは感激だったけど彼女はとても不愉快な思いをしたと思います。本当の大人なんですね。ぼくも本当の大人になりたいなぁと、この文章を書きながらおもっているところです。

  12. より:

    Zhong Jasmineさん、こんにちは。確かに丸めてゴミ箱にポイは過激でした。あの時点で、仕事をキャンセルされてもしかた亡かったと思います。でもKTさんはほんもののプロデしたね。受けた仕事は何があろうときちっとやる。ぼくなんか足下にも及ばないほど大きな方でした。ハイヒールを美しく履いて歩く人って魅力的ですよね。素晴らしい人はコツコツという音が違いますね。コツコツの音がクールで歯切れいい。日本の女性は、ちょっとべとっとしたコツコツの方が多いみたい。Jasmineさん、じぶんで敬遠しないで素敵な音を響かせて歩いてください。

  13. ちえみ☆ より:

    一生、忘れられない仕事ですね(^_^)vいい思い出ですね。

  14. 沈丁花 より:

    asoboさん。おはようございます。プロとプロのプライドのせめぎ合い……asoboさんの激しい気性を見ました。すてきです。でもその中からより優れた作品が生まれ、お互い妥協しなかったということから逆に、人間と人間としての信頼関係というか、尊敬の感情が生まれるんですね。全体図ではなくとも、『私の気分』というasobo さんの文章の爽やかさ、そしてそれに発止とぶつけたKTさんのイラストの強靭さ…。緑と黄色、という鮮明な配色とタッチの強さに、その時のお二人の、仕事上の駆け引きの激しさと、生身の人間としての気持ちのせめぎ合いが十二分に伝わってくる気がします。asoboさんは、いつも、こういう激しい…そして後になるとたまらなく懐かしい、真剣勝負のお仕事をなさっているんだと、しみじみ感じました。私も、この鮮やかな記事の一頁が忘れられなくなりそうです。ぜひ、すてきなフレームをお探しになってお部屋に飾ってください。人でも仕事でも。『脳裏に焼きつく』出会い、というものがあって、それが人を作っていくんですね。美しい記事なので、思わず長く書いてしまいました。ごめんなさい。

  15. Jasmine より:

    おはようございます。うぉ~~何も丸めてゴミ箱に捨てなくても…想像するだに背筋の凍るシーンですよ~!でも結果、よりよいものが出来て良かったですね^^この緑色の靴は、オーストリッチかな?私はパンプスがどうしても足に合わず、長時間履くことが出来ないのでハイヒールをコツコツと鳴らしながら颯爽と街を歩く女性に憧れてしまいます。

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中